●日程 2018年2月17日(土)〜21日(水)
●参加者
高見 秀太朗(ピアノ)【2/17~21】
高井 瑠波 (クラリネット)
森田 はるか(フルート)【2/17~20】
伊藤 瑛海 (ピアノ)【2/17~18】
●サポート
鈴木 真衣 (ソプラノ)・千葉 展子 (フルート) 【2/21】
宮城県文化振興財団 アウトリーチ登録アーティスト
●テーマ: ずっと、愛をつなごう。
今年度は、東北青少年音楽交流会プロデューサーの大庭泰三さんと協力し、コミュニティをつなぐアーティスト育成を目的とした、山梨・塩山でのコンサート&研修会を夏に実施、その参加メンバー3人が冬の訪問を担いました。
これまで継続してきた仙台市東部や、石巻市での活動に加え、ピアニスト・仲道郁代さんが毎年、小学6年生全クラスにワークショップを実施している七ヶ浜町・七ヶ浜国際村のご協力を頂き、町内3校中2校の小学4年生または5年生に対する取り組みを実施しました。
震災から7年、様々な支援が終了しつつありますが、子どもたちは成長を続け、今まさに大人への階段を上っている最中です。地域コミュニティも、これからが本当のスタートです。
●オリジナル・ワーク
☆ 音楽に込められた気持ちを「見て」みよう
音楽を通じて伝えたい気持ちが、もし目に見えるのなら、どんな様子なのでしょうか。言葉にできない気持ちを、音に乗せて伝える音楽。「悲しい」「楽しい」などの言葉では伝えきれない部分を伝えるため、黒板に張ったカラフルなハートの折り紙から気持ちの色を選び、その裏に五感を駆使して想像した「気持ち」を書いていきます。
ふわふわ、ドロドロ、とげとげ、重い、きらきら、良い香り… 特徴を多角的に想像していきます。言葉だけでなく、形や絵で描いてもOK。いつの間にかストーリーが出来上がっていることも。
全員で色を見せ合うと、まずは人それぞれ全く違う色を選んでいることに驚きます。そしてその背景は自分の思いもよらない広がりがあることに気づき、音楽のもつ力が、このワークによって何倍にも広がったことを実感します。
●曲目
☆エルガー:愛のあいさつ
☆ガーシュウィン:アイ・ガット・リズム
☆ブラームス: ハンガリー舞曲 第5番
☆ギロック: 歩道のカフェテラス
☆シューマン:ロマンス 第2番
☆ビゼー: カルメン より 「恋は野の鳥」
☆ショパン:子犬のワルツ
☆リード: ヴィクトリアン・キッチン・ガーデン組曲
☆プッチーニ: 私のお父さん
☆ボロディン:ダッタン人の踊り
☆ムーン・リバー ☆Wave ☆ダニー・ボーイ
☆上を向いて歩こう ☆学生時代
【カフェ ら・めーる MECP Heart to Heart Concert & うたごえカフェ】
太平洋に面し、それほど雪の降らない石巻市ですが、この日は大雪。しかしそんな中でも、渡波のカフェ ら・めーるには優しいあかりがともり、多くの人が集まっていました。毎月第3土曜日夜に行われる「うたごえカフェ」にお邪魔させて頂き、前半はMECPコンサート、後半は皆さんとともに、メンバーも伴奏や歌に参加しながら、往年の名曲を次々に歌いました。歌詞がないからこそ、想像力で心をつなぐクラシックと、一緒に声を出し、歌詞の言葉にともに励まされる歌の力。両方が組み合わさり、今日会った方々とは思えないほど深いつながりを全員が共有し、楽しい夜を過ごしました。
会場: カフェ ら・めーる (宮城県石巻市松原町2-19)
佐野さん夫婦が震災後、渡波に人が集える場所を作りたい、との思いで自宅をカフェに改装し、オープンしました。珈琲工房いしかわの石巻ブレンド、ら・めーるカレーやピザトーストなど、ホッとするカフェメニューのほか、うたごえカフェやハンドクラフトをはじめとするイベントも多数開催し、地域の皆さんの「第二のリビング」となっています。
【MECP Heart to Heart Concert in 大橋団地】
MECPが何度も訪れている大橋団地。すでに転居された方も、コンサートの噂を聞きつけ、お越しくださいました。頻繁に集まることは難しくとも、音楽がある場所だからこそ、こうして再会し、また音楽を通じて心をつなぐことができるのです。
しかし大橋に集う皆さんは私たち以上に元気にあふれ、大爆笑の時間を過ごしました。もう私たちにとっても、訪問させて頂く場所ではなく、皆さんとつながり続けたいと願い、戻ってくるための場所です。
会場: 仮設大橋団地 東集会所 (宮城県石巻市大橋1-1-2)
徐々に復興住宅などへの移転が進み、立ち並ぶプレハブ仮設住宅は空きが増え、入居者数は減少しています。しかし、集会所はこの7年のコミュニティをつないだ中核であり、未だ残る方にとって、これからも大事な場所です。
【七ヶ浜国際村 視察】
今回の七ヶ浜学校訪問に際し、多大なご協力を頂いた七ヶ浜国際村は、施設の管理・運営のみならず、教育普及プログラムなど多数の事業を行い、文化芸術を通じてまち・ひと・アーティスト・ホールが成長していくような、様々な工夫を凝らしています。高井・森田は七ヶ浜初訪問のため、まずは国際村をご案内頂きました。なんといっても、舞台後方の大きなガラスの向こうに海が見渡せる、日本で唯一の「客席から海が見えるホール」何度訪れても感動します。
七ヶ浜国際村 (宮城県宮城郡七ヶ浜町花渕浜字大山1-1)
七ヶ浜町の複合施設として1993年開館。財団法人地域創造 平成20年度JAFRAアワード、公共施設百選にも選ばれています。上述のホールのほか、水に浮かぶ野外劇場「アンフィシアター」ほか、類稀な美しい施設が揃います。
【七ヶ浜町立亦楽小学校 MECP 音楽ワークショップ(5年生)】
今年度、亦楽小で行われた仲道さんのワークショップには高見もアシスタント・ファシリテーターとして参加しました。次年度対象となる5年生に今回実施したワークは、「音楽を見つめてみよう」がテーマ。ただ耳に音楽を流すのではなく、様々な角度から音楽と向き合い、意識してとらえ、自分と音楽のつながりを知る体験を目指しました。
会場:七ヶ浜町立亦楽小学校 音楽室(宮城県宮城郡七ヶ浜町代ヶ崎浜細田54-1)
論語の有名な一節「朋有自遠方来。不亦楽乎(朋有り遠方より来る、また楽しからずや)」に由来するという学校名。広い校庭で今はのびのびと過ごす子どもたちですが、町の中心部に近く、震災発生時は重要な拠点となりました。
【MECP Heart to Heart Concert in 田子西第二市営住宅】
私たちが大切にしている復興住宅コンサート、仙台市社協のご協力で今回も実現しました。
平日にもかかわらず、集会所は満員。音楽を共有することで、普段集まる同じ場所・仲間でありながら、世間話ではわからない一面を聞いたり、リズムに乗って楽しんだりといった新しい活動で、普段とは違う体験を一緒にすることになります。これが安心感と新たな発見の両方を生み、コミュニティをつなぎ続けるきっかけとなるのではないでしょうか。
コンサート後は恒例のお茶会。音楽を通じて少し打ち解けた関係の中で、いろんな方から伺うお話は、報道とはまた違った、皆さんそれぞれにとっての震災と、あの日からの7年間が見えてきます。
会場: 田子西第二市営住宅集会所 (宮城県仙台市宮城野区田子西2丁目)
平成27年度完成。他の復興住宅と同様に、仮設住宅ごとの移転ではなく、新たな公募による入居のため、もともと居住していた地域や、仮設住宅での暮らしのコミュニティとは異なり、これからも引き続き新たなつながりを創出することが防災の観点からも重要です。
【七ヶ浜町立松ケ浜小学校 MECP 音楽ワークショップ(4年生)】
被災した児童にとって。非言語たる音楽で心に直接アプローチする活動は危険をはらむこともありますが、その力を前向きに深めるために重要なのが「楽しく共有する」作業です。厳しい経験を乗り越えた後に、旧態依然とした社会に復帰するのではなく、よりよい社会を創出する力を生み出すため、今被災地の教育で音楽ができることを考えます。
会場:七ヶ浜町立松ケ浜小学校 音楽室(宮城県宮城郡七ヶ浜町松ヶ浜神明裏52)
海のすぐそばの高台に位置する松ケ浜小の音楽室からは、窓から太平洋を一望できます。
震災発生当時は、仙台港周辺の製油所火災のために避難指示の出た住民を含め、最大2000人もの避難者を受け入れました。
【MECP Heart to Heart Concert in 田子西三丁目町内会】
前日の田子西第二市営住宅から、道を挟んで向かいに位置する田子西三丁目地域。集合住宅に比べ閉じこもってしまいやすい戸建住宅団地であるからこそ、地域がつながっていることが重要です。音楽好きの方の多かった今回は、様々な曲を楽しみながら、異なる観点のエピソードなどを通じて深め、共有する作業をじっくり楽しみました、帰り際には、町内の皆さんがつくられたハンドメイド雑貨をたくさん頂きました。とても素敵でした♪
会場: 田子西三丁目町内会集会所 (宮城県仙台市宮城野区田子西3丁目)
田子西隣接地区(田子西三丁目)は、市東部の一部に指定された災害危険区域に住居があった方々の、防災集団移転先として、震災後新たに市によって造成された住宅団地です。
集会所を中心に、町内会による趣味のサークル活動や住民交流イベントなど、活発な活動が行われています。
【石巻市立雄勝小中学校 MECP 音楽ワークショップ】
大きな津波被害のあった雄勝地区は、小中学校が復旧できず、他校への間借り状態が続き、ようやく今年度より新たな学校として再スタートを切ったばかりです。小学校が1階、中学校が2階で、特別教室を共用する小中併設校の特徴を生かし、小中9学年の児童・生徒 計40人が揃ってのワークショップとなりました。年齢差を考慮したワークは悩みましたが、上級生の豊かな想像力と素敵な取り組みに下級生が感動し、下級生のピュアな感性にも上級生が大切に耳を傾けていました。一丸となって未来を切り開く、希望にあふれる時間となりました。
会場:石巻市立雄勝小・中学校 多目的ホール(宮城県石巻市雄勝町大浜字小滝浜2-2)
雄勝・大須の両小中学校が平成28年度で閉校、旧大須小校地に新たな小中併設校として校舎を新築し、2学期より使用開始した校舎です。多目的ホールは音楽室を兼ねており、背景が全面窓となっている開放的な空間です。
●お世話になった皆さま
庄司 美知子先生(仙台中央音楽センター)
〜電子ピアノを4日間貸与いただきました。
長谷川 郁子様(たぶのきネットワーク石巻)
~石巻市内の活動を、訪問先のコーディネートから当日のお手伝いまで、心強くサポート頂きました。
佐藤 渉様・中澤 国彦様(七ヶ浜国際村)
~七ヶ浜町立小学校との連絡・調整、また当日もご同行いただき、多大なるご協力を賜りました。
各訪問先ご担当の皆さま
仙台市社会福祉協議会
石巻市社会福祉協議会
たぶのきネットワーク石巻
大庭 泰三様 (日本環境改善協会)